人の興味

今日のサブゼミ(学生&ポスドクだけで自主的にやっているゼミ)の担当でした.以前にもここで書いた、以下2報を紹介しました.



植物病原細菌P. syringaeが植物に分泌する病原性物質AvrPtoBによる植物のプログラム細胞死(PCD)の抑制が、AvrPtoBのもつユビキチンライゲース活性によるものという論文.
個人的には植物病原細菌が感染する際、宿主植物の酵素に似たものを細菌がもち、宿主を操作している.という点でおもしろいと思ったのですが(動物では結構知られていますが,植物ではこの知見が乏しいのです)、参加した他の人の興味はむしろこのAvrPtoBのユビキチンライゲース機能がどのように獲得されたかにあったようです.ユビキチンライゲースは植物、動物でもある程度相同性がある(=アミノ酸配列が似ている)のですが、AvrPtoBは既に知られているユビキチンライゲースとの相同性がありません.ただし活性部位の結晶構造はほぼ一致しています.このことからAvrPtoBは植物や動物のもつユビキチンライゲースとは起源が異なり、水平移動によるものでもなく、収斂進化によって獲得されたと考えられます.他の人は特にそのことに興味を引かれたようです.人と話をするとこういった自分があまり考えなかった観点を気付かせてもらえるし、そのことについて深く議論できるのが面白いところです.
今回の論文ではAvrPtoBのターゲットのタンパク質が同定されておらず、私としてはこのタ−ゲットがなんであるかに最も興味があったのですが、まあまだ分かっていないことは仕方ない.このユビキチンリガーゼはRINGタイプなので、ターゲットの認識にはSCFが必要.見つけるには一工夫必要そうですが,論文を見る限りユビキチン化されたターゲットタンパク質のバンドがウェスタンでどーんと出ています.ユビキチン抗体で免疫共沈降して、MSで同定できそう.植物がトマトなのでまだゲノム情報が構築段階ですが,近いうちに同定できそうな気がします.まだ不明なことだらけである植物のPCD誘導機構の解明にもつながると思います.続報が楽しみ.